葬儀の準備ができないまま父を見送った後悔

これは、ご依頼者様の実際の体験談を元にして制作されたストーリーです。

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準備がないまま父を見送った日

50代のある日、ある日突然、父が突然の心筋梗塞で倒れて、病院で急逝しました。
母とは離婚して父一人で子育てしてくれたおかげで親子仲は良い方だったと思うのですが、気まずさもあり葬儀や墓地の話などは一度もしたことがありませんでした。
よくある話しだとは思いますが、親戚の葬儀は経験していたので、父の葬儀も「その日」がくれば何とかなるだろうと考えていました。


病院からの「当日中に遺体を移動してください」

父が急遽した病院に到着すると、親族確認の後、父との対面もそこそこに死亡診断書の受け取りとなりました。
それと同時に医師から「まことに恐縮なのですが、規則上、本日中に遺体を移動していただく必要があります。」と告げられました。
「まだ家も、葬儀屋も、何も準備できていない」と訴えても、決まりは変えられません。
正直、父が亡くなった実感や悲しみよりも動揺が強かったことを覚えています。これからどうしよう。
せめて…と病院の方が善意で葬儀社を紹介してくれ、そのまま連絡を取りました。


葬儀社の数百万円の提案を、言われるままに受け入れた

葬儀社に着くと、「時間はありませんので」と、通夜、葬儀、墓石、戒名…次々と手配の話が進みます。
この時は手間のかかることをどんどんと進めてくれるので「助かった」という思いでいました。親族や役所への連絡、やるべきことが山済みの中で、余計な事は考えたくありませんでした。

状況が変わったのは見積もりの話しになってからです。提示された総額は葬儀と墓地、手続きの代行など、総額で数百万円にのぼりました。
正直、嫌な汗がどっと出てきました。
俺の父を粗末に扱うことは出来ない。こんな金額どうしたら良いのか?妻は驚いた顔をしている。兄弟はいつ来るんだ?早く相談させてくれ。
悩んでいる最中に、葬儀社から提案を受けます。
「ご遺体は長時間保存できませんし、火葬場も予約が必要です。今決めないと間に合いません。」
「最後の別れです、出来ることをやらずに後悔しても後からは取り戻せません。私たちが可能な限り、納得のいく別れにいたします。」
結局、その場で契約することに決めました。いまから思えば決断というより諦めに近かった気がします。


後悔から始まった終活、息子たちに同じ思いはさせたくない

盛大な父の葬儀の2カ月ほど後。遺品整理や書類手続きがやっと落ち着き始めて、父との別れに時間を持ち始めました。
それと同時に、私はとても後悔していました。

葬儀と墓地の支払いは大きな負担となり、自分たちの老後の資金を一部利用することになりました。妻も仕方ないとは言ってくれたけど、本当のところはどう思っているのかわかりません。申し訳ない気持ちでいます。
父はあんな盛大な通夜も、必要としていたのか?墓地や、戒名や、どこかで節約できなかったのか?そんな風に考えてしまう自分に腹が立ちます。
なにより、お金や今後のことに気を取られて、父との別れに十分に思いを向けることが出来なかったことがいまでも悔しい。
私はこの経験から、家族のためにも「自分の葬儀は、自分で準備しておこう」と強く思いました。同じような経済的な負担や後悔を持たせることはしたくありません。

特に、息子のことは強く意識しました。私が先に旅立つか妻が先に旅立つかわかりませんが、最終的に二人が旅立った後に残されるのは息子たちです。
しかし長男でまだ20代前半。私がそうだったように、親の葬儀のことなど考えた事も無ければ、考えたくもないはずです。だからこそ私が準備しておかないといけないのです。


自分の葬儀は、自分で決める

私は自分の葬儀では通夜を省き、形式を簡略化することにしました。さらに希望の墓地も事前に契約してあります。
その結果、墓地を含めても費用はおよそ100万円程度で済む見通しです。父の時のように、数百万円をかける必要はありません。

私にとって、これは息子たちへの“最後のプレゼント”です。
私と同じ失敗はせず、彼らが自分の人生を安心して歩めるように。それが私の結活です。


もしあなたが「まだ先のこと」と思っていても、
突然の別れは、ある日、本当に突然やってきます。
その時、悲しむ時間すら奪われないこともあるのです。

だからこそ、元気なうちに。
自分や家族のための準備は、決して早すぎることはありません。

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